大変なもの観ちゃったなあ。
あらすじなど(ネタバレ注意)
期待以上の作品でした。
あんなに緊張した状態で映画を観るという体験はそんなにないでしょう。
練習シーンもコンクールでのシーンでも、フレッチャー教授がいるだけで緊張感が凄い。彼の生徒たちは堪ったもんじゃなかったろうなあ…。
何が不気味かって、フレッチャー教授に全然人間味が感じられないの。
そりゃ人間なんだから笑ったり、激怒したり(というかしすぎ)、涙ぐんだりするわけですが、全部白々しい。この人には怒り以外の感情がないんじゃないか、と思う。
主人公のアンドリュー君には家族や恋人とのシーンが出るけれど、教授には何もない。「完璧な音楽」をつくることが生き甲斐らしいんだけど、何でそれを目指しているかとか、どういった経緯でそうなったのか、まったく何もない。だから怖い。他の作品の悪役もしくは悪人が持つ、隙がないから。
そんなわけでフレッチャー教授がどんなに猫なで声でアンドリューのご機嫌をとっても、他の学生を褒めても、何しても、嫌な予感しか浮かばない。絶対裏がある。この人が、「実は良い人でした」で終わるわけがない。というか、そんな風に終わってしまったら、それまでの緊張感が台無しになってしまったと思う。最後だって別にアンドリューの根性を認めたわけではないんだよ。人間を認めるような人じゃない。彼は音楽のことしか考えてないと思う。
その割には、ただ一人の人間潰すために一ステージ潰すという行動がよく解らなかった。あれは幼稚だったな。
アンドリュー君の方は、最初はイケてない感じの子だったのに、段々顔つきや言動が変わっていって…不安になりました。何しても死亡フラグが立ってしまう系男子。ただし既の所で助かるみたいな。音楽のためになら何を犠牲にしてもいい、という教授ゆずりの考え。それを洗脳と言うのです。
彼には同情したいし、よく頑張った!と褒めてあげたいけど、恋人に対する仕打ちは最低だなと思いました。
教授のこともそうだし、語られる割に実態のない母親のことや、音楽に理解のない親族、コウモリのような父親…はあまりにも悲惨だった。どんな思いであの子は、ドラムを叩いてきたのだろうと考えると哀しくなる。また少年の時の映像が可愛いんだ…。父親の微妙にずれている愛情が傷跡抉りますね。
完璧な音楽~という言葉で「オーケストラ!」を思い出した。
セッションとはまったく違う趣向だけど、壊れたり病んだりしてしまう症状は一緒なんだなあ。
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